枝光橋梁 ~我が国の製鉄を支える橋~(福岡県)

 日本製鉄㈱九州製鉄所の八幡地区と戸畑地区を結ぶ専用鉄道の橋。この鉄道は元々は石炭の運搬や製鉄に伴って発生する鉱滓(スラグ)を戸畑地区埋立に活用すべく建設した鉄道で、その名も「炭滓線」でしたが、銑鉄や半製品の輸送へと変化していき、現在では「くろがね線」との愛称で呼ばれています。
 専用鉄道の橋ではありますが、同形式の松住町架道橋より2年早い、鉄道橋としては現存最古のブレーストリブタイドアーチ橋。建設時は国鉄鹿児島線等を跨ぐ鉄道橋でしたが、鹿児島線が1999年(平成11年)新線に切替られ、今は道路を跨ぐ管路橋へと変化しています。高架橋部の管路は二列あるラーメンの主桁内側片方とその隣の縦桁とに跨って載っており、この二つを横桁や横構で接続するアンバランスな面白い構造をしていました。上を走っていた線路は1972年(昭和47年)に架設された新橋に切り替えられ単線となりましたが、軌道も恐らく現在の管路と同じ位置に敷設されていたものと推測されます。 
 東京の大動脈、総武線を支える松住町架道橋をミスタープロ野球、ジャイアンツの長嶋茂雄氏に例えるなら、こちらは地味でいぶし銀とも言われたホークスの野村克也氏といった所でしょうか。太平洋戦争中も大活躍した枝光橋梁、管路橋となった今も陰ながら我が国の製鉄を支えています。両氏の御冥福を祈りつつ…。

・竣工:1930年(昭和5年)
・構造:ブレーストリブタイドアーチ橋、鋼高架橋
・設計:土木部長 沼田 尚徳 氏ら

参考文献・八幡製鐵所五十年誌/八幡製鐵㈱八幡製鐵所 1950
      ・福岡県の近代化遺産/福岡県教育委員会 1993

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投稿日時 2025-07-23 20:05:58

投稿:Jun Ito