人工海底山脈
(人類の夢:海での食糧生産を土木技術で実現)

 「全海洋面積の僅か0.1%の湧昇海域で世界の魚類の50%が生産される」というRyther(1969)の論文は、深層水に含まれる栄養素が海の生態系を支えていることを証明しました。この栄養素の豊富な深層水を光が届く表層に供給するために巨大な山脈を海底に構築します。人工海底山脈(詳細はhttp://www.asmi.co.jp )が植物プランクトンを増やし、後は自然の生態系が魚介類を増やすという日本発の夢の技術です。
 1995年に人工海底山脈の実証事業が行われ、2000年には対象海域の漁獲量が事業前の6倍に増え、人工衛星による観測で植物プランクトン濃度が1.5倍になり、事業前には魚のいなかった海域が魚の楽園になりました(http://youtu.be/Ga-zjAspOGw)。この実証事業の成果を受けて10海域で県による公共事業が実施され、さらに2010年から大規模に国が直轄する事業も始まりました。
 しかし、自然に比べれば小さな海底山脈の影響を海洋環境の揺らぎの中で評価するには高精度の海洋観測と解析技術が必要です。海の生物生産の仕組みを探る挑戦が今も続けられています。

投稿日時 2013-10-10 14:26:00

投稿:鈴木 達雄