一乗谷川 ~甦った戦国時代の街並み「朝倉氏遺跡」を流れるふるさとの川~

 一乗谷朝倉氏遺跡は、戦国時代の城下町が保存された国の特別史跡であり、福井県・福井市により遺跡の発掘や武家屋敷の復元など、史跡公園として整備が進められている。ここを貫流する一乗谷川の改修を史跡公園の整備と一体的に行ない、安全で魅力的な名所づくりをめざした。
 写真の箇所は、本史跡の核である領主館と復元武家屋敷に挟まれた史跡公園の枢要部である。発掘された文化財との景観上の配慮・調整、蛍の棲める川としての自然再生に同時に取り組んだ。出土した石垣を現代の護岸として活用し、史跡公有地を河川敷として緩い法面にし、現存植生の回復を図った。
 護岸は巨石積・張とし、木工沈床の基礎で、水域と野草法面とを生態的につなぎ、多段式落差工を採用し、魚をのぼりやすくした。堤外水路を設け、清冽な水を領主館内濠に引き込んだ。橋梁には、地場産・笏谷石の風合いを持たせ、高欄・桁隠しに木材を活用し、身障者用坂路も設けた。これらの取り組みが評価され、平成27年度の土木学会デザイン賞・最優秀賞を受賞した。

投稿日時 2017-01-19 17:51:00

投稿:脇本 幹雄